なぜ製品比較の前に要件整理が必要なのか
CMS選定でよくある失敗パターンは、「同僚から聞いた製品」や「広告で見たツール」から検討を始めてしまうことです。製品ありきで動くと、自社に本当に必要な機能と、製品が提供する機能のズレに気づくのが遅れます。
要件が曖昧なまま比較を進めると、スペックが過剰な製品を高いコストで導入したり、逆に機能不足の製品を選んで半年後に再選定を強いられたりします。製品デモを見る前に、まず「自分たちは何を解決したいのか」を整理することが、結果として選定の最短経路になります。
現状把握はどう4軸で数値化するか
要件整理の出発点は「現状を数値で把握すること」です。以下の4軸を確認しましょう。
- 更新頻度:月に何ページ、どのくらいの頻度でコンテンツを更新しているか
- ページ数:現在のサイトのページ総数と、今後1〜2年で増やす予定のページ数
- 編集者の属性:更新者はエンジニアか、非技術者のマーケ担当者か。何人いるか
- 連携システム:CRM・MA・ECなど、サイトと連動させたい外部システムはあるか
この4軸を埋めるだけで、必要な機能レベルの輪郭が見えてきます。更新頻度が低く・ページ数が少ない場合は、そもそもCMSを新規導入しない「現状維持・導入見送り」が合理的な選択肢になります。
課題を分解する:誰が何に困っているのか
「サイト更新が大変」という曖昧な課題を、もう一段具体化します。
- 「エンジニアへの依頼待ちで更新に時間がかかる」→ 非技術者が自走できる管理画面が必要
- 「複数担当者が同時に編集してコンテンツが上書きされる」→ 承認ワークフローや権限管理が必要
- 「Webサイトとアプリでコンテンツがバラバラになっている」→ APIでコンテンツを配信するヘッドレス構成が必要
- 「新しいサイトを立ち上げるたびにゼロから設定している」→ 既存環境の横展開活用が使えるかもしれない
課題の性質によって、解決すべき手段が変わります。課題を分解しておかないと、「高機能で何でもできるツール」を選んで機能を持て余すことになりやすいです。
Must / Want の優先順位はどうつけるか
課題が整理できたら、要件を「Must(絶対必要)」と「Want(あれば嬉しい)」に分類します。
Must要件の例:
- 非技術者がエンジニアなしでページを更新できる
- 承認フローを設定できる
- 既存のCRMと連携できる
Want要件の例:
- AIによるコンテンツ生成支援
- 多言語対応(将来的に必要になるかもしれない)
- 詳細なアクセス権限の階層設定
MustとWantが混在したままだと、Wantのために過剰なスペックと費用を払ってしまいやすいです。製品デモを受ける前にこの分類をしておくと、営業担当者の説明に引っ張られにくくなります。
6つの戦略パターンをどう仮置きするか
CMSの解き方には大きく6つの戦略パターンがあります。比較段階に進む前に、自社がどのパターンに近いかを仮置きしておくと、選定軸が定まりやすくなります。
- 「エンタープライズ統合基盤」:大規模サイト・複数ブランド・多言語・IT部門との共同運用
- 「ノーコード高速立ち上げ」:エンジニア不在・スピード重視・まず出すことが目的
- 「ヘッドレス分離構成」:フロントエンドの自由度・複数チャネルへのコンテンツ配信
- 「既存環境の横展開活用」:すでにCMSがあり、新規サイトに同じ基盤を使う
- 「静的サイト生成+Git管理」:更新者がエンジニア・ライセンスコストゼロ・高速表示優先
- 「現状維持・導入見送り」:今は課題が顕在化していない・リソースを別の施策に集中する
この仮置きを持った上で比較段階に進むと、どのパターンを深掘りするかが決まり、製品選定の判断が格段にしやすくなります。比較段階での具体的な見方はCMS比較で製品名より先に確認すべきこと:戦略パターンと5軸の見方に整理しています。
「買わない条件」はどう決めておくべきか
要件整理の最後に、「この条件が満たせないなら導入しない」というラインを決めておきましょう。
- 更新ボトルネックが現時点では発生していない
- 移行工数を負担できるエンジニアリソースがない
- 導入後に社内で運用できる担当者がいない
これらの条件に該当する場合は、「現状維持・導入見送り」が正当な判断です。CMS導入はゴールではなく手段であり、導入それ自体に価値があるわけではありません。リソースを別の施策に集中させることが、事業にとってより大きな成果につながる場合もあります。
料金はこの段階でどう考えておくべきか
要件整理の段階では、まだ製品比較に入っていないため具体的な金額を出す必要はありません。しかし、Must要件をどこまで絞り込めているかは、後工程で発生する費用規模の見立てに直結します。Want要件を明確に切り分けずに進めると、比較・稟議の段階でスペック過剰な製品を選びやすくなり、初期費用だけでなく移行工数や社内学習コストまで含めた総額が膨らみがちです。この段階でMustとWantを区別しておくことが、後工程でのコスト精査を軽くする準備になります。稟議を通すための3年トータルコストの考え方はCMS導入の稟議を通すために:意思決定と3年トータルコストの考え方で扱います。
CMS選定でよくある失敗パターンとは
CMS選定でよくある失敗は、要件整理を飛ばして製品比較や営業デモから検討を始めてしまうことです。自社の課題を分解しないまま比較に入ると、高機能で何でもできる製品を選び、実際には使いこなせない機能にコストを払うことになりやすくなります。逆に、更新頻度やページ数といった現状把握を怠ると、機能不足の製品を選んで導入後すぐに再選定を迫られるケースも起きます。要件整理の段階でMustとWantを分け、6つの戦略パターンのどれに近いかを仮置きしておくことが、この種の失敗を避ける最も確実な手段になります。
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