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電子契約 購買段階: 情報収集

電子契約を検討し始める前に整理すべき「自社の要件」

電子契約ツールの選定を始める前に、自社の契約件数・取引先構成・法務リスク・社内体制を棚卸しする方法を解説。製品比較の前に「そもそも導入すべきか」を含めた要件定義の進め方を紹介します。

Buyers Code 編集部 (2026年7月5日 更新)

この記事の要点(TL;DR)

  • 製品を見る前に「月間契約件数」「契約の主導権がどちらにあるか」「取引先の電子化対応状況」の3点を把握することが出発点になります。
  • 電子契約には大きく6つの戦略パターンがあります。まず自社がどのパターンに近いかを仮置きしてから情報収集すると、調査範囲を絞りやすくなります。
  • 「導入しない」も正当な選択肢です。契約件数が月数件以下の場合や、取引先の多くが紙を求める業界では、現状維持が合理的な判断になりえます。
  • Must要件(法的有効性・セキュリティ基準・既存システムとの整合)とWant要件(操作性・テンプレート数・レポート機能)を分けてリスト化すると、後の比較段階がスムーズになります。
目次

なぜ製品調査の前に立ち止まるべきか

電子契約ツールを検討し始めると、すぐに製品比較サイトや各社のLP情報が目に入ります。しかし、製品の機能一覧を眺めても「自社に合うかどうか」は判断できません。なぜなら、電子契約には複数の戦略パターンがあり、パターンが違えば見るべき製品も評価基準も変わるからです。

情報収集段階でもっとも重要な問いは「どの製品を選ぶか」ではなく「自社はどの戦略パターンで電子化を進めるか」です。このページではその前提となる要件整理の方法を説明します。

まず把握すべき3つの数字とは何か

要件定義の起点となる数字は次の3つです。

  • 月間の契約件数(送信件数・受信件数それぞれ)
  • 自社が契約を主導するケースと相手方が主導するケースの比率
  • 現在、紙・PDF運用にかかっている工数の概算(担当者×時間)

この3つを把握するだけで、後続の議論がずっと具体的になります。特に「月間件数が数件程度」であれば、そもそも導入しないという判断(現状維持)が合理的な場合があります。件数が少ないうちは、ツールの費用が削減できる工数を上回ることがあるためです。

6つの戦略パターンと自社の仮置きをどう行うか

電子契約には代表的な戦略パターンが6つあります。要件整理の段階では、自社がどのパターンに近いかを仮置きしておくと、後の調査範囲を絞りやすくなります。

  • 「クラウド標準SaaS導入」:月数十件以上の契約があり、まず早く電子化したい場合に向くパターン。社内開発ゼロで始められる。
  • 「エンプラ統合・API連携」:月数百件以上で、基幹システムとの一元管理が必要な大手・エンプラ向けのパターン。
  • 「自己署名・内製PKI」:金融・医療など高度なセキュリティ規制があり、外部クラウドへのデータ送信を避けたい場合のパターン。
  • 「相手方指定サービスへの乗り入れ」:自社発信の契約が少なく、取引先主導で電子化が進んでいる場合に有効。自社ではサービスを契約しない。
  • 「特定取引に絞った限定導入」:効果を検証してから全社展開したい、または予算が限られている場合のスモールスタートパターン。
  • 「PDF合意記録・現状維持」:件数が少ない、または取引先の多くが紙を求める業界の場合、現状を続けることが合理的な選択肢になる。

「どのパターンにも当てはまらない」と感じた場合は、複数パターンの組み合わせも考えられます。ただしその場合は要件が複雑になるため、まず一つのパターンに絞って検討することを推奨します。

Must要件とWant要件はどう切り分けるか

要件を整理する際は、Must(これがなければ導入しない)とWant(あれば望ましい)を明示的に分けることが重要です。

Must要件の例:

  • 電子署名法・e-文書法に対応した法的有効性の担保
  • 自社のセキュリティポリシーへの適合(ISO27001・SOC2等の認証有無など)
  • 特定の基幹システムとのデータ連携
  • 相手方がアカウント不要で署名できること

Want要件の例:

  • テンプレートの豊富さ
  • 承認フローのカスタマイズ性
  • 分析レポート機能
  • モバイル対応の操作性

Must要件が明確になっていないと、比較段階で「どの製品も似たり寄ったり」という迷子状態になりやすいです。

「買わない条件」はどう定義するか

多くの担当者が見落としがちなのが「買わない条件」の定義です。以下に当てはまる場合は、ツール導入より先に解決すべき問題がある可能性があります。

  • 主要取引先の過半数が電子契約を拒否している
  • 自社内の決裁フローが整備されておらず、電子化の前提となるプロセスが曖昧
  • 担当者が1〜2名しかおらず、導入・定着を担える余力がない
  • 月間契約件数が非常に少なく、費用対効果が出る見込みが薄い

これらの条件に当てはまるならば、現状維持(PDF・紙運用の継続)という判断は適切です。電子契約ツールは「あると便利なツール」ではなく、「使い切れる体制が整ってから導入するもの」と捉えるとリスクを下げやすくなります。稟議に上げる段階で問われる3年コストや定着リスクの整理は、電子契約の稟議・意思決定:3年コストと定着リスクを整理して判断するで扱っています。

次のステップ:戦略パターンごとの比較へどう進むか

要件整理が終わったら、次は仮置きした戦略パターンを軸に製品の絞り込みに進みます。「どの製品にするか」より先に「どのパターンで解くか」を決めることで、製品比較の軸がぶれにくくなります。比較段階の考え方については「電子契約の製品比較:「どの製品か」より先に「どの戦略パターンか」を決める」で詳しく解説しています。

料金や工数面でよくある失敗パターンとは

電子契約の検討でよく見られる失敗は、ツールのライセンス料金だけを見て、自社の運用工数を見落とすことです。Must要件とWant要件を切り分けずに比較を進めると、「あれもこれも欲しい」状態になり、工数のかかる高機能プランを選んでしまいがちです。また、「買わない条件」を事前に定義していないと、担当者の体制が整わないまま導入を進め、結果として工数負担だけが増えるケースもあります。まず現状の紙運用コストを概算し、Must要件を明確にしたうえで比較に進むことが、こうした失敗を避ける基本になります。

自社に合う選び方をどう進めるべきか

自社に合う電子契約の選び方は、まず6つの戦略パターンのうちどれに近いかを仮置きすることから始まります。月間契約件数、契約の主導権の所在、現状の紙運用にかかる工数という3つの数字を把握したうえでパターンを絞り込むと、比較対象を無駄に広げずに済みます。パターンが定まったら、Must要件を満たさない候補を除外し、Want要件は優先順位づけの参考情報として扱うのが基本的な進め方です。「導入しない」という選択肢も含めて検討することで、選び方自体の精度が上がります。

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出典・参照

  1. 各ベンダー公式情報(具体値は一次ソースで検証) — 本文は具体数値を断定せず、一次ソースでの確認を前提に記述
月間契約件数と契約種別の分布を把握しているか自社発信の契約と相手方発信の契約の比率を確認したか現状の紙運用にかかる工数・コストを概算したか取引先(主要顧客・仕入先)の電子署名への対応意向を確認したか法的有効性・セキュリティ基準など、外せないMust要件を言語化したか

よくある質問

電子契約ツールを入れると何が変わるのですか?
最も確実に変わるのは「紙の印刷・郵送・保管・捺印の工数」です。一方、契約締結スピードが上がるかどうかは取引先が電子署名を受け入れるかどうかに依存するため、一律に期待できません。自社内の工数削減を主目的に据えると要件が立てやすくなります。
うちは契約件数が少ないのですが、それでも導入を検討すべきですか?
月間契約件数が数件程度であれば、ツールの費用対効果が出ない可能性があります。まず「現状の紙運用にかかっている工数・コスト」を概算してみてください。その数字とツールの費用を比較した上で判断するのが合理的です。現状維持(PDF合意記録の継続)も有効な選択肢の一つです。
取引先がまだ紙にこだわっている場合はどうすればよいですか?
自社発信の契約が少なく、相手方が契約フローを主導するケースでは、「相手方指定サービスへの乗り入れ」という形で対応できる場合があります。主要な電子契約サービスは受信者がアカウント不要で署名できる仕様が多く、自社でサービスを契約しなくても対応可能です。取引先の電子化状況を最初に確認しておくと、要件の解像度が上がります。
情シスと法務、どちらが主体となって要件定義を進めるべきですか?
電子契約は「法的有効性の確保(法務)」と「システム連携・セキュリティ(情シス)」の両面が絡みます。どちらかが単独で進めると後から手戻りが生じやすいため、最初から両部門で要件を持ち寄ることを推奨します。特に電子署名の種類(立会人型・当事者型)の選択は法務判断が必要です。

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Buyers Code 編集部

監修: 渡邊悠介(株式会社Hibito)

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